茅ヶ崎市立美術館で開催中のイギリス風景画と国木田独歩という展覧会を観てきた。独歩が最晩年に市内のサナトリウムで過ごしたことにちなむものだが、風景画とは何かを考えさせられるいい企画であった。
独歩はワーズワースの詩の世界に影響を受け、「武蔵野」という詩情溢れる散文作品を残した。イギリスにはターナーなコンスタブルに代表される風景画を芸術の域に高めた歴史があり、その手法を独歩は学んだことになる。
注目したのはイギリス人画家が描いた日本の風景が大変鮮やかであることや、何気ない街角の景が取り上げられていたことだ。逆に日本人が描くイギリスの風景も華やかさが自国の画家の作品より際立っていた。恐らく旅行者でなければ見えない何かがあるのだろう。
かつて万葉集を学んでいた頃、大伴家持が越中の地名を盛んに歌作に残していることに注目したことがある。国守としての任期の中でしかも無縁の地をなぜ取り上げたのか。それは国守としての自負もあっただろうが、やはり異郷の惹きつける何かがあったのではないか。そんなことも考えさせられ展覧会だった。
