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書店の意味

 近隣の書店が閉店してしまった。駅ビルの中にあって便利であったのに残念でならない。電子書籍を利用することも多いが、大切な本はやはり冊子で購入したい。それがどんどん難しくなるようである。

 小規模の書店は近隣からほぼ消滅してしまった。いくつも支店をもつ中規模以上の本屋が残り、それも次第に数を減らしつつある。読書をする人が減ったのに加えて、ネット注文ができたり、電子書籍が普及したりで、この業界には逆風が吹き荒れている。

 自分の本を所有することの意味はデジタル化社会でも変わらないといわれる。知識の吸収という面において紙面メディアは優位にあると言うことはデジタル教科書問題でしばしば議論されている。

 その意味で書店が消えていくことは残念だ。損失というしかない。

成功は失敗のもと

 今読んでいる野口悠紀雄『リープフロッグ』は経済的な弱者がその条件ゆえに一気に先頭に立っていくという逆転の経済仮説を述べたもので興味深い。強者と弱者の格差が年々開いていくと考えるのが一般的であるが、実は条件さえそろえば一気に状況が変わるというのだ。

 氏は中国を例えにしてこの現象を説明する。古代中国は様々な発明をし、強大な王国を作り上げたものの、その体制を保全するために保守化し、欧米や後進の日本にリープフロッグされたが、いま欧米日本が既得権益を維持するために新技術を開発する力を持ちながらその先に踏み出せないうちに、中国が再逆転したというものだ。これはある意味積極的な発展観であり興味深い。逆転されたら再逆転しようというモチベーションにもつながるものだ。

 ただ、気になったのは現状に満足しているとそれが滅びの原因となっていくということだ。つねに次の段階を考察してあらゆる可能性を考えていかなくてはならないということになる。このレベルにも当てはまることだろう。

感情的な描写を論理的に考える

 小説の読解の方法の基本は、登場人物の心理の変化を正確にたどることである。これができれば小説の世界を深く理解できる。現実の人間の世界はかなり複雑な構造をとる。人間の心理というのは数式に表せるほど単純ではない。いろいろなことを同時に考えており、局面においてその感情の一部分が顔を出してくる。だから人間というのは実に複雑である。

 小説の世界は作者によって一定の世界観を付与されており、その登場人物も設定上の制約の中で活動する。かわいい女の子はいつまでたっても無邪気なままだし、おんぼろの世界の中で何とか自己実現をしようとしている。現実とは似て非なる世界の中である。その造形の中で私たちは人間について考えることになる。

 小説は筆者の仕込んだ構図の中に一度没入し、さらにそこから浮き上がって俯瞰することで深い味わいを受け取ることができる。私が教室で教えたいのはその点であり、いつもそれを目指しては失敗している。

中央林間図書館

 神奈川県大和市の中央林間図書館は東急ストアなどの複合商業施設の中にあります。蔵書は少ないですがショッピングをしたついでに気軽に立ち寄れるなかなかいい場所です。

 図書館のあり方については各自治体で様々な試みがなされています。中央林間図書館の場合は気軽に利用できる点で優れています。図書館というと私語厳禁の密室的な雰囲気がありますが、ここはショッピングセンターの中にあるためかなり開放的です。図書館とタイアップした星乃珈琲店も隣接しており、おしゃべりやコーヒーと読書とを両立できる空間まで用意されているのです。

 最近は労働時間の短縮のために職場を早めに引き上げる必要がありますが、その時間で資格取得のための勉強や趣味の読書をする人も増えているようです。そんなときに気軽に利用できる図書館の存在はありがたい。私もこれからしばしば立ち寄ることになりそうです。

読書推進

 読解力の低下が話題になっています。中高生だけではなく、大人世代にも共通する社会問題です。

 読解力の低下が読書の習慣がないのと相関関係にあるというのはおそらく事実です。文字だけの情報から発信者の意図をくみ取るのには、経験が必要です。特に文章を構造的に把握する力は纏まった本を読むことで培われるものです。では本を読みなさいというだけで事態は解決するのかといえば、そんなに簡単なものでもありません。

 私たちは興味のあることには時間を忘れて熱中することができます。読書に熱中するためには興味のある内容を読ませる必要があるのです。読ませたい作品があるのは事実であり、それが一定の効用を持つのが明かでも、読書を押しつけるだけではならないのです。

 興味のある本を選ばせて読ませる時間をもっと与えなくてはならない。そのための工夫も必要になるでしょう。