学生時代、万葉集を専攻した私にとつては明日香村周辺の世界遺産認定への動向は注目すべきであり、至極当然のことと考えられる。日本の国家の濫觴というだけではなく、東アジアの島国がなぜ統一的な国家意識を保てたのかについて考える機会になるからだ。
たとえば英国は日本と同じ島国国家であるが、歴史的には複数にわたる侵略を受け異なる民族と文化の融合が起きている。英仏海峡が対馬海峡より渡航しやすかったことや、バイキングの存在がその要因と考えられている。
東アジアの辺境の列島が国家を形成し、独自の文化を発展させた礎が飛鳥付近にはある。学生時代はよく尋ねた。多くは建造物が失われた遺跡であり、建物も後世に再建されたものが大半だ。建築様式なども往時のものとは違うらしい。
ただ、たとえば大和三山をいろいろな場所から見たり、古墳の大きさを感じたりすると、見えない古代の姿を幻視したくなる。地図だけでは分からない距離感や方角の感覚を感じることができるのである。飛鳥の景観を維持する意味はそこにある。
ただ、世界遺産としての保存と、地域の人々の福祉とは両立しなければならないものだ。それをどのように行っていくのかが課題になるのだろう。
