大丈夫ですか

 大丈夫というのは安心ができる安定した状態をいうことばと子どものころは思っていた。ただ最近は確認や拒否の場面で用いられている。むしろこの方が多い気がする。例えばレジ袋はいりますかと店員が聞く場面で「レジ袋は大丈夫ですか」と尋ねる。客は「大丈夫です」といえば拒否の意味になる。

 「大丈夫」という名詞の意味は立派な男子ということで、剛健な男子が安泰であることを意味にしたのだろうか。それが安定状態という言葉に活用され、副詞的に使われるようになった道筋は想像できる。それがなぜ確認の文脈で使われ、拒否の回答で意味をなすようになったのか。

 思うに日本語によくみられる婉曲の表現の一つと考えるのが最もわかりやすい。確認するのも、拒否も本人の意思がむき出しになりやすい。そこで、用件の許諾そのものではなく、人の心理状態の方に置き換え、意志の確認を是か非かではなく感情の問題にしていることがこの受け答えの背景にあるように思う。

 私自身は最近の大丈夫の使い方にはなじめずにいる。変な気遣い無用などといきがってしまう。これは彼らの使用の意図とは異なっているから、私の憤懣はお門違いなのは分かっている。ただ、大丈夫ですかといわれるとそこまで窮地には陥っていないなどと勝手に考えてしまうのである。

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