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組み合わせ

 新しいものを作り出すことは容易ではありません。ゼロから作ったという表現には明らかな誇張があります。創造神でもない限り無から有を生み出すことは不可能です。

 私たちが新しいものと感じているのは大抵の場合、既存のものの組み合わせです。今までにない取り合わせ、意外な連係が新しいものとして現れるのでしょう。私たちはもっとミックスとかブレンドとかに興味を持つべきなのです。

 これは有形物のみならず、無形の概念、社会の仕組みなどにも共通します。新しい何かを考えるときには現状の分析と大胆な組み合わせとが肝要なのです。

仲間と孤独

 文学作品を書き上げる上で必要なのは抜きんでた才能であることは確かです。誰もが名作を書けるわけではない。ただ、才能さえあればいいというものでもないようです。

 作家の人生を調べてみると必ず盟友ともいうべき存在がいます。同じ作家であったり、批評家や出版社の人物であったりと様々なのですが、密な交流をしている存在があるのです。ときに物的精神的支援者として、あるいはライバルとして彼らの存在は創作者に刺激を与えるのです。

すると作品は決して個人の産物ではなく、周囲の人物との関係の中で結実するものと言えそうです。この点を忘れると作品の生命力が損なわれることになるのでしょう。

交友

 調布市にある武者小路実篤記念館に行ってきました。住宅街の中に建つ小さな展示室は文学とは何かを考える素晴らしい空間でした。

 武者小路実篤といえは白樺派の穏やかな作風の小説家であることと、晩年に描いた野菜などの静物画とそこに付された人間味溢れる一言が有名です。この記念館を訪ねて知ったことは、彼が多くの人に支えられ、また支援していた人も多かったということです。残された書簡には友人からの助言や、編集者との交流など交友の中から作品が生まれていたことが伺えるものが多数ありました。

 文学作品が一人の卓越した能力によってのみ生み出されるのではなく、周囲の人たちとの相互作用によって醸成されるものであることが実感できる気がしました。

 実篤の生きた時代は価値観が激変していく難しいものであっただけに、かえって周囲の人々の支えが必要であったのかもしれません。