自分とは何かという問いは誰もが一度は行う。容易に答えが出ないので、多くの場合は思考停止となる。そんなことは分からなくても日々の生活に困ることはない。むしろどうでもいいことをあれこれ考える方が時間の無駄ということになる。
でも、自分を失うと厄介なことが起きる。現代のように常に他者の発信する情報に囲まれていると、果たして今の判断は私のものなのか、流行りの意見に迎合したのかが分からなくなる。迎合の意識があるうちはまだいい。自己判断を停止したままで周囲の環境に自動的に合わせて、それに違和感すらなくなっている人にとっては、最早自分の判断というものが消えている。彼らに自己責任を問うことはたやすいが言われた方には戸惑いが起きるだろう。私は決めていない。流行りに従ったはずだ。多分そうだと。
こういう時代には自分が他者に操られる事態を起こしやすい。最近の流行語であるインフルエンサーは、他者への影響力が強い者という意味と心得ているが、この語が流通しているのは真のインフルエンサーが本当は少ないことを意味している。でも、多くは動かせないがいわゆるクラスタクラスの影響はあることになる。
もし強力な影響力を持つ存在が権力の野望を持って登場すれば、容易に独裁者になれる。現代はその下地が整っていると言える。自分とは何かという厄介な問いを後回しにしているうちに事態は予期せぬ展開をするのである。
多くの人が是といっても何かおかしいことがあればそれを指摘できる気概は保持しておくべきだ。多くの人にそれは変だけどと言われても、変と言っている貴方が変だと言える自己にならなくてはならない。情報社会において自己を保つのは難しい。でも、それができなければ危険な未来が待っている。
