異次元

 首相の年頭所感表明に異次元という言葉が何度か使われた。この言葉は日銀総裁の金融緩和策に関して使われてきたのであまり印象がよくない。無理やりやって効果はあまりないという先入観ができている。首相の言いたいことはもちろんこの意味ではなかろう。ただ単なる誇張表現ならば無意味だ。

 次元という考えはそれを特定するための座標軸との関係で語られる。私たちの生活する世界は縦と横と高さの3次元でできていると言われる。よく聞く2次元とはそこから高さが失われた世界であり平面的なものである。漫画の登場人物を2次元の人物というが、実際には紙にもインクにも厚みがあり、本当は3次元だ。

 異次元という言葉には異世界と同義で使われる例もある。同じ3次元でも全く状況が異なる平行世界である。そのもどきをメタバースで実現しようとしている。これは先の異次元とは大分趣きが違う。現実逃避の意味合いも内包するのがこの意味の異次元だ。

 首相が仰りたかったのはそのどちらでもない。いままでとはまったく別の価値観、思考法で考えるということだろう。言うことは容易いが果たしてそんなにうまい話はあるのだろうか。少子化対策と言いつつ、結局は補助金をばら撒くだけならまったく同次元だ。具体的に何をして、それにどのような実効性が期待できるのかをリーダーは示さなくてならない。

 現代の日本人は陳腐な誇張表現に慣れて鈍感になっている。どうせ口先だけだろうとも思う。口説の人が横溢する中で本当の手応えを求めている。内閣の人事のゴタゴタを解決して真のリーダーシップを示してほしい。増税の可能性を表明した度胸は認める。やるべきことをやっていただければ評価する国民は多いはずだ。選挙前の人気取りならばいらない。

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