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大暑

 二十四節気の大暑である。節気は大抵の場合、日本の気候とずれているが大暑だけは言い得ている。そして今更言われたくない。

 暦上は夏の終わりが大暑であり、次は立秋になる。実際には恐ろしい残暑が待っているのだが、昔の人は暑さの中に秋を感じ取った。連日続く酷暑の中にも秋の種がやどり、すでに芽を出しているものもあるのかもしれない。

 この時期に鰻を食べる習慣は万葉時代に遡るかもしれないが、実際に大衆の文化になったのは江戸時代であるという。昔は何をおいても食べたい好物の一つだったが、最近はそこまで思わない。これも馬齢を重ねたためであろうか。それよりも冷や麦の方が数段魅力的だ。食生活に関しては安上がりになりつつある。

身体にいいもの

 私の場合、食べる者には無頓着であり、いわゆるグルメではない。小腹が満たせればそれでいいと考えてしまう。おいしいものを食べるのに越したことはないが、そのために金銭を費やすほどの情熱がない。これはある人に言わせれば大変残念なことらしい。おそらく私がパッとしないはこういう考え方にあるのだろう。

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 そんな私でも時々、健康上食べるべきものと食べるべきではないものというような記事を読むことがある。それらの中でたとえばナッツ類はよく話題にのぼる。コレストロールの抑制、皮膚の再生などに効果のある栄養素があるので食べるべきだという人もいれば、高カロリーなので肥満の原因になるという人もいる。多くの食材は健康に寄与すると同時に病因にもなる。禍福を包含したものであるというのが事実なのだ。

 食べるということは異質のものを体内に取り込むことであるから、本来何らかの問題が生じないわけがない。長い生命の進化の中で栄養摂取のために取り込むことに成功してきたものが食物となり、その中にはわずかな毒や害悪をもたらす成分が含まれていることもあるということなのだろう。それが食べるということであり、生きるということなのだ。

 そういう極めてスリリングなことを毎日続けているうちに、そのスリルにすっかり麻痺している。食べられればなんでもいいなどと考えだした私は、やはりとても残念な生き物になっているのかもしれない。