韓国の尹大統領が弾劾された。政局悪化に非常戒厳を持ち出したのは悪手と言わざるを得ず、国民感情を逆なでしてしまった。ただ野党側の党首も汚職疑惑があり、自分への批判をそらすために国民の関心を反日運動に向けさせようとする手法をとるリーダーなのが気になる。この策を取っていた過去の大統領はいずれも失策して失脚している。
韓国は日本以上の少子高齢化と格差拡大という厳しい現実にあって、安定的な政局が不可欠だ。国民の観点からすれば今の状況を何とかしたいと願っているのだろう。だが、彼の国もそれを実現してくれるリーダーがいないようだ。
戒厳令は全斗煥大統領の起こした光州事件の記憶が先行し、政局の展開の手段としては間違っている。ただ、おそらく野党党首の李在明氏が次期大統領に適当かといえばかなり怪しい。つまり、未来を託せる指導者がいないのだ。今回は大手メディアも戒厳令の方に注目し、事態の背景を追いきれていない。韓国の若者層もソーシャルメディアを含めた報道に踊らされて冷静な判断力を失っている。
これは日本も似たような状況にある。ただ、分断を嫌う国民性がようやく混乱を抑えているのかもしれない。容易に解決できない問題に直面しているとき、そしてそれを導く者がいないとき、民主主義はどのようになるのだろうか。それを考えさせられる。
