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心配な韓国の政情

 韓国の尹大統領が弾劾された。政局悪化に非常戒厳を持ち出したのは悪手と言わざるを得ず、国民感情を逆なでしてしまった。ただ野党側の党首も汚職疑惑があり、自分への批判をそらすために国民の関心を反日運動に向けさせようとする手法をとるリーダーなのが気になる。この策を取っていた過去の大統領はいずれも失策して失脚している。

 韓国は日本以上の少子高齢化と格差拡大という厳しい現実にあって、安定的な政局が不可欠だ。国民の観点からすれば今の状況を何とかしたいと願っているのだろう。だが、彼の国もそれを実現してくれるリーダーがいないようだ。

 戒厳令は全斗煥大統領の起こした光州事件の記憶が先行し、政局の展開の手段としては間違っている。ただ、おそらく野党党首の李在明氏が次期大統領に適当かといえばかなり怪しい。つまり、未来を託せる指導者がいないのだ。今回は大手メディアも戒厳令の方に注目し、事態の背景を追いきれていない。韓国の若者層もソーシャルメディアを含めた報道に踊らされて冷静な判断力を失っている。

 これは日本も似たような状況にある。ただ、分断を嫌う国民性がようやく混乱を抑えているのかもしれない。容易に解決できない問題に直面しているとき、そしてそれを導く者がいないとき、民主主義はどのようになるのだろうか。それを考えさせられる。

現代の文化の下地になっているもの

 韓国の古典文学の一つ「春香伝」を読んだ。まさに韓流ドラマの原点といえるような内容だ。岩波文庫に収められたものは訳も秀逸である。

 両班の少年が地方で妓生の娘に偶然出会い、たちまち恋に落ちるがまだ無位無官のため、結婚もできずに都に帰る。その娘が春香なのであるが貞節を守り、その後その地に赴任してきた悪徳官人の招集を無視したために怒りに触れて拷問され、命も尽きようかというときに、乞食の姿に身をやつし、実はすでに暗行御史となっていたヒーローが救い出すという実にわかりやすいストーリーだ。

 この話は大変もてはやされたらしく、多くの異伝があり、語り物的な文章も幾多の改変、もしくは増補の繰り返しがあったものと考えられる。中国の古典を踏まえた装飾的な文体、韻を踏んだものづくし的列挙などは語りの後を感じさせる。性愛にかんする過剰な描写が突如現れたり、執拗な拷問の描写などメリハリがあるのも庶民性が残っているからだろうか。

 この展開の在り方は現在の韓国時代劇にもみられることであり、それが先に述べた原点を感じさせるものである。もちろんこのほかにも私が知らない話がたくさんあるのだろう。日本の漫画やアニメ、ライトノベルなどの原型が江戸時代のさまざまな作品に見いだせるのと同様、芸術・芸能・文化にはどこの国でもその下地にあたるものがある。それを知ることで理解できることもあるに違いない。

日韓首脳会談

 ようやく日韓首脳会談が行われた。両首脳とも国内では支持率の低下に苦しんでいるが、一歩を踏み出した勇気に素直に称賛したい。

 両国が互いをライバルと考えるのはよいことだ。世界的視野で見れば殆ど似ている関係にある。似ているからこそ争える。かつては植民地支配という不幸な時代があった。今は対等だ。韓国は日本を凌駕することを目指すべきであり、日本は韓国の成長に負けるべきではない。

 ただ、敵であってはならない。地政学上、日韓は自由主義国家としては孤立している。北朝鮮は一向に軍事支配を捨てない。中国の共産党も相容れない政策を続けている。日韓はその国家に包囲されていることを忘れてはいないか。

 韓国ではいざというときには日本の批判をすれば株が上がるらしい。日本にその傾向はないが嫌韓を話題にすると売れるという残念な風潮がある。しかし本当の脅威は何かを考えるべきだ。どうも離間の計にはまっている気がしてならない。 

交流は別次元で

 韓国が日韓軍事情報包括保護協定を破棄した報道は極東の軍事情勢に詳しい人たちの間では相当な衝撃であったようです。まるで韓国が別陣営に組してしまったかのように考える人もいるようですが、ここは冷静に処すべきです。日韓の国民のうち冷静になれるのは日本の方です。

 韓国では慰安婦問題や徴用工への補償をめぐって日本への責任追及をする動きがあったところに、日本が半導体素材などを輸出規制したことに端を発して、一気に反日の機運が高まりました。日本製品の不買運動や日本への旅行自粛なども起きています。親日家を非国民的に扱う歴史的な経緯をもっている韓国においては、このような時流においては付和雷同する国民運動が起きているといえます。そのようにふるまわないといけないという同調圧力も強く働いているように察します。また、韓国政府も反日運動を政権支持に利用しているかのような様子もうかがえます。韓国の国民がこの対立に冷静に対処するのはかなり難しい状況にあることを推し量るべきでしょう。

 日本ではいわゆる嫌韓の人々がネットなどに次々に書き込みをしていますが、実はリアルな政治集会や抗議運動はほとんど報じられていません。きわめて過激な小さな団体が何かをしているのかもしれませんが、社会を動かすほどの組織的な韓国への抗議運動は行われていないのです。韓国の製品や、テレビドラマ、タレントなどの文化的なコンテンツに関する拒否の動きもありません。むしろ若者はそれらを好んで使っていることはほとんど変わりがありません。

 NHKを含めて韓国のドラマは多くの放送局で放映されています。またK-popの話題は絶えることはなく、韓国料理の店もにぎわっています。嫌韓の人よりもはるかに多い韓国文化愛好者がいることは紛れもない事実です。私たちは政治家たちの手練手管に便乗する必要はありません。よいものはよいと認め合うことを続けていかなくてはならないでしょう。

 政治的な、というより両国政権の対立として映る今回の混迷を国民は冷静にとらえるべきです。本当に利するのはだれか、喧嘩の野次馬をしているうちに自分自身の立場を悪くしていかないか。メタな認識をすることがいま最も必要なことだと思うのです。

不買運動の無理

韓国で日本製品の不買運動が起きているようですが、完全な不買という行動は無理なようです。日本の製品や部品が使われているものは多く、それらを排除すると社会生活自体が成り立たないのです。

この事実は日本でも同じです。電子機器の多くを韓国に依存している現実を認識する必要があります。アメリカ企業の多くも韓国製半導体を使用しており、国際依存が高いのはどこの国も同じなのです。

ならばなぜ自国ですべてを生産しないのかと考えるのですが、ハイレベルの製品を作れる能力をつけることや、それにかかるコストを考えると国際競争に勝てないからでしょう。日本自体の産業構造がそのようになっています。

貿易立国が通商において不自由をもたらす政策は、自国の根本を揺るがす失策です。移民で発展を遂げてきたアメリカが移民を排斥するようになったのにも通うのですが、自国の立ち位置を見失うと大問題になります。

不買運動が無理なこと、輸出入制限が国家の根幹を揺るがすことなどを市民レベルで確認しておく必要があります。

分断の世界情勢

 日本が韓国に対して輸出品の優遇措置をとる特例を廃止したことが大きなニュースになっています。日本側は日本が輸出した原料や製品が韓国を通して国際情勢上対立している国や、紛争中の国家に輸出され軍事利用されていることを容認できないのがこの措置の理由だとしています。韓国側も報復処置として優遇措置を停止したとのことです。日韓の摩擦は従軍慰安婦問題や徴用工の問題がその発端と考えられます。

 アメリカと中国の関係も関税の掛け合いで悪化するばかりであり、英国はEUからの脱退に向けて動いています。どうも最近の国際情勢は分断分裂が基調になっていて不穏です。それもこれも自国優先主義が蔓延しているからでしょう。自分の国さえよければそれでいいという考え方は、今日の世界情勢では取ってはならない方策です。世界は相互依存関係にあり、一国だけでは立ち行かない。それなのに自国のみに利する方策をとれば必ず無理が生じてくるのです。

 この現状を止めるのは誰なのか。誰が国際社会に落ち着きと現実的な解決をもたらすのか。今の各国のリーダーの中にはそれができそうな人物がいそうもないのが大変気がかりです。