巷のノート術を読んでわかったこと
講演などのノートをとるとき、多くの場合スライドや板書(黒板などに書くこと)された文字や図だけを移すことになる。書かれなかったことでも大切だと感じたとことはメモをとることが多い。ただ筆記に熱中しすぎると肝心の話の内容が理解できなくなる。ノートの目的はあとで思い出せるようにするための鍵となる言葉や図を書いておくことなのだ。
さまざまなノート術の本やサイトを巡覧するに、ノートには次の3つの記入欄をつくり、一覧できるようにレイアウトするのがいいらしい。
- ① 講演を聞きながらメモを取る欄
- ② ①を読み返しながら、その見出しを作る欄
- ③ ②の整理に基づき、自分の言葉で内容をまとめ直す欄
見出しをつけて内容を整理する
②は雑然ととったメモにまとまりをつけるための作業である。つまりあとから見出しをつけることだといえる。先述したノート術指南書のなかにはここを質問形式にしてみるといいとあった。例えば「もっとも効果的なノートのサイズは?」の様に書いて、①の欄を隠して再現できるのかをチェックするのだという。それもいいが、私はそれぞれの話のエッセンスを俳句くらいの長さ(つまり17音)くらいにまとめる方がいいのではないかと考える。たとえば「書きやすく持ち運ぶにはB5メモ」とか「ノートのサイズはA4がいい」などである。これは話の要素を短くまとめる作業だ。
自分の言葉でまとめ直す
③が実は一番大切で、ほかは実は何でもいい。聞いた内容を自分の言葉でまとめ直すのは知識を内在化し知恵に深めることの手助けになる。この際大切なのは教師なり講師の話し方や用語そのものに拘らず、あくまで自分の持っている言葉でどんな内容だったのかを記すことだ。この方法だと正確な記録にはならない。ただ、個人がもつノートは公式記録である必要はない。自分勝手なまとめであるべきだ。逆に言えばこの自分なりの言語化ができなければノートを取る意味は半減する。
ビジネス用途の場合は、もともと識者の見解を正確に覚えることよりも、それを自分の仕事の中でどのように応用するかという方に関心があるはずだ。偉い先生が何を考えていようと構わない。要するにそれは使える考え方なのか、使えるならば使ってやろうというのが目的のはずだ。ならば、この欄は自分ならばこう使うという視点でまとめればいい。学問の世界とこの点は違う。
ノートの取り方は誰に習う
学校でノートの取り方を習ったことはあるだろうか。ノートの大きさや大体のレイアウトは教えられても、どのように書くのかは教えられない。まして何を書けばいいのかとか、そのように書くのはどんな意味があるのかといったことも習わない。せいぜい字はきれいにとか、落書きするなとか、板書したことは書きなさいとかだろう。実はわたしはこれらを今は言わないようにしている。
字はきれいな方がいいがノートの場合は自分が読めればいい。人に提出するものは別だ。落書きは関係がないものはだめだが、授業を聞きながら思いついたものなら絵でも漫画でもなんでも書けばいい。ただし、熱中しすぎると肝心なことを聞き落とすので細かく描くのはお勧めしない。板書したことを全部書く必要はない。それも話し手の思考整理のために書いているのに過ぎない。自分があとで思い出すために必要だと感じるだけ書けばいいし、足りなければ書いてなくても付け足す。
ただし、復習の際に書くのは日本語(自分の一番使える言語)の文章でまとめるようにする。図表にだけにするとわかったつもりになってしまっていることもあるので、きちんと言語化したい。その際に自分の感想を付け加えてもいいが、まずは話されたことは何かをまとめてから、それとは別に「以上の話を聞いて」とか「以下は私の感想だが」などで書き始めるようにする。こういったことは中高生のうちに学校で教えるべきだろう。
まとめ
以上から考えるとノートを取るにあたって復習ということがいかに大切かということだ。話を聞きっぱなしにせず、今日はどんな話をきいたのかを思い出し、それを自分の言葉でまとめ直す。その作業をどれだけ繰り返すかが学びの成果に大きく関わる。そしてこういうノートの使い方は学校で教える必要がある。