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見た目レトロ

 松本零士作品の代表作、銀河鉄道999は蒸気機関車のような姿をしながら、実は驚くべき高性能という設定である。宇宙戦艦ヤマトは発進時に最新兵器としての姿を現すが、銀河鉄道の方は、宇宙空間でも煙を吐きながら進む。これには過去の風景を未来に描くというロマンが表現されている。

 この感性は尊重されていい。最新の機能を持ちながら実は最新鋭というスタイルには憧れる。例えば、昭和世代では懐かしいサニーや2000GTの形なのに実は電気自動車だったり燃料電池対応だったりする車があれば魅力的だろう。最新型なのになぜか窓ガラスはハンドルで回して開けるというのもいい。誰か造ってくれないだろうか。

 人間もそうでありたい。見た目はくたびれた老人であっても実は最先端の技能を持っている。感性も新鮮だ。しかもそれを奢ることなく、謙虚な行き方をしている。そういう人は憧れである。見た目はレトロ、実は最新型というものに憧れる。また、そういうタイプの人になりたい。

宇宙で人生を描く

 松本零士さんが逝去されたと報じられた。心よりお悔やみ申し上げます。私の世代は松本作品から多大なる影響を受けている。

 宇宙戦艦ヤマトは企画作品であったようで、松本零士の世界そのものではないという。ただ、人物設定や容姿についてはほぼ個人の提案が通っていたという。銀河鉄道999や宇宙海賊キャプテンハーロックなどは母性愛や友情、さらには文明批判の要素があって興味深いものだった。もっともそのメッセージは子どもには分かりにくいところもあり、宇宙を舞台としながらも、実は日常の人間ドラマを描いているのである。

 初期の作品などはさらに生活感が強く感じる。その生活臭をSFの殻を被せて客観視できるようにしたのが松本零士作品の魅力であろう。また読み直してみたくなった。