来年は丙午(ひのえうま)にあたる。この年に生まれた女性は気性が激しく家庭を亡ぼすという迷信があり、直前の1906年、1966年は出生率が顕著に減少している。ただこの迷信の根拠が江戸時代に起きた八百屋お七の放火事件にあるというからかなりあやしい。お七は火事で自宅が火災になったとき、非難した場所で知り合った男と恋に落ち、その後別れたが火事になればまた会えると思って自宅に放火したという。ぼやで済んだがこの罪で火あぶりの刑に処せられたという。そのお七が丙午の生まれだというのだ。お七を取り上げた井原西鶴の『好色五人女』などによればお七は丙午生まれではない。そもそもこの浮世草子自体が創作であり、史実ではないのだがどうもこの女性の人生が江戸の人々には同情を惹いたようで何度も創作化され、そのなかで丙午誕生説ができたらしい。
この根も葉もない迷信がなぜか丙午生まれの女性を差別する伝統を作ってしまった。1966年も人口ピラミッドをみると明らかに不自然にへこんでいる。この生まれの人たちはどうかと言えば実は偏見に悩んでいるというよりは恩恵を受けていることの方が多いようだ。同級生が少ないことは入学試験や入社試験で有利に働くということである。来年はこの迷信による出産抑制は少ないといわれている。そもそも何もなくても人口減少が激しいこの国にとって、毎年が丙午のような迷信にとらわれているといっていいのかもしれない。
国家を維持するための人口が不足しつつあるというのが専門家の意見である。丙午の迷信を気にする若い世代は少ないと考えるが、それでも多少の影響はあるのかもしれない。同級生が少ないということはデメリットもあるが、どちらかと言えばメリットの方が大きいような気がする。迷信にとらわれず、むしろそれを利用するようなたくましさが求められている気がする。
