いわゆるボキボキ整体というものに対して一定の憧れがある。学生時代に激しい肩凝りを感じ、それをストレッチによって幾分解消できると知り、クラック音のなる整体に憧れるに至った。
ただ、私は根本的にケチであり、実証性の劣るものには金銭的な費えをしないという方針が身についていた。だから、数十分で数千円もする整体に行ったことは一度もない。
自らそれに近いことをすることは学生時代に覚えた。首を伸ばしたり、肩や腰を意図的に曲げたりしてストレッチ効果を狙った。その際、しばしばクラック音がすることがあり、それが一種の達成感になることもあった。それが根本的な治癒にはならないことを何となく知りながら、それ以上を考えない思考停止があった。
恐らく二足歩行を始めて以来、人類がその後に受けることになる苦しみは、どの人類にも共有されていたはずだ。整体が必要とされるという幻想も恐らくはその苦しみに耐えるための方便の一つに過ぎない。