若い人たちと話すとき、つい今の世代は恵まれている自分はこんなに苦労したという話をしたくなる。でも、止めておくことにしている。昔は昔の苦労はあったが現在の条件こそ異なれ大変なことには変わりない。比較することに意味はない。
ある時期まで、若い世代の苦労話というのが軽薄に聞こえて仕方なかった。何を甘いことを言っているんだと思った。この感覚は世代ごとに繰り返されるようで、昭和後半の私の経験は、先輩たちにはかなり甘いものに見えたことだろう。戦争の経験のない世代は同じ日本人とは思えないほど価値観が違ったはずだ。
その先輩たちも、明治の人々からは幸せ者と思われていたはずだ。時代は巡り、世の中が発達しても、それぞれの時代に苦労はあり、悩みがあったはずなのだ。
だから、現代の若者の感じている苦難を軽く見積もるのは止そう。彼らの生活の背景となっている時代というものは、登場人物を明るくも暗くも照らし出す。自分だけ過去の世界に逃避してあれこれ批判しても新次元は見えてこないだろう。