アスファルトの僅かな隙間から鮮やかな紫の花をつけた草が固まっているのを見つけた。スミレであった。なかなか可憐な姿をしているのに、たくましい生命力である。
スミレと呼ばれる草花はいくつもあって、パンジーもその仲間だというが、いわゆるスミレは東アジアにだけ分布するのだという。万葉集の山上憶良の歌にスミレを歌ったものがある。それにはスミレを摘みに来たとあり、採取されるべき植物であることが分かる。スミレの種の中には食用とされるものがあり、ネット上に調理法がいくらでも見つかる。憶良の歌にも食用説が古くからある。
スミレはその他の文学の素材としてもしばしば取り上げられ、その多くは魅力的な存在として扱われている。だから、アスファルトの隙間に咲くものを見つけると何か場違いで意外な気持ちになるのだろう。ただ、他の雑草と違って容易に摘み取られない傾向にあるようだ。