何の意味もない図形の中に意味のある形を見出してしまうのは人間の能力の一つなのだろう。火星表面の写真にいくつもの動物や人面などを見つけ出してしまうことは有名だ。火星までいかなくても私たちは、身近な幾何学模様や、自然の造形物に同じように何らかの形象を見出す。パレイドリア現象というそうだ。
最近買おうと思っているスマートフォンのカメラの配置が生き物の目のような配置になっていることが一部の人たちの話題になっている。これはデザイナーがパレイドリア効果を狙って作ったものと考えられる。人の表情は単純化されやすく、いわゆる絵文字の類はこれを最大限に利用したものだ。確かに(^.^)は人面に見える。この力を活用したものが漫画などの画法である。細部まで描きこまなくても脳が勝手に足りない線や面を足してくれる。省けるところまで省けばかえって表現の可能性が高まる。
どこまで省けるのかを考えていけば抽象画の世界にたどり着く。逆に意図してない自然物を組み合わせて観客に自由にものを見出させる芸術もありうる。そしてそういう作品にこれまで何度か出会ってきた。見る人によって見えるものが変わるという芸術である。
これは脳の見せる錯覚であるともいえるが、その錯覚のために私たちは複雑な世界をとらえることに成功してきたのだ。単純化とその敷衍が面倒な世界を抽象化してくれる。詳細を見逃すことで物事をとらえやすくし、本当は個々に異なる対象をグループ化しまとめて把握することができるのである。形を見出す力は、人類が長い進化の上で獲得した一つの能力なのだろう。
