物質的な視点

 科学の本を読んだ後は私たちが見ているものは自然現象の一過程に過ぎないと考えてしまう。いろいろな現象が重なり合って私が感じる現実が形成され、その印象から概念が形成される。こういう思考方法では、私たちの見ている世界は極めて物質的な偶然性の産物ということになる。

 それにしては私たちの経験は多種多様であり、そこに法則性は見いだせないような気がする。ある現象と、別の現象の間に因果関係があるといえばあるが、ないともいえる。それが私の考える実感である。物質的な観点に立てば、私が見ている様々な現象は本質的には一つにつながっていることになる。そうは見えないけれど。

 すべての物事が統一的な世界の中に含まれるという考えは、むしろ宗教に近い。物理学者は宗教の対局のようでありながら、実は最も宗教的な考えを持つ。私はその深みには全く近づけないが、自分の実感というものがどこまで自分のものなのかという素朴な疑問を繰り返している。

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