勝てばいいというわけではなく

 日本大学のアメリカンフットボール部が廃部するという。幾多のスキャンダルや薬物疑惑が続出したからには仕方がない。残念なのは日大を目指してフットボールを日々練習している選手諸君である。

 内部事情は分からないから、的を射た指摘になっていないかもしれないが、彼らはあまりにも勝負にこだわりすぎたのかもしれない。勝てばいい。勝利こそ正義と刷り込まれてきたのではないだろうか。勝って得られる報酬が大きすぎるあまりに、肝心なモラルとかマナーとかをあとに回してしまった可能性がある。

 私たちがスポーツに求めるのはもちろん勝率は欠かせないものの、それ以上に生き様を端的に見せてくれることにある。そして、何度でもやり直せると思わせる夢の提供が魅力だ。

 それが一部の優秀なタレントにフィールドを独占され、勝てば何をやっても許されるような雰囲気の中で戦うことになれば、次第に選手の心根も変わってくる。ボールを追いかける純粋な気持ちは勝敗なり、パスの成功率という数字に変換されてしまう。そこにはもう個人はない。

 最近、いろいろな日本代表チームが好成績を残しているので誇らしい限りだが、勝つために個人や社会の何かを壊しているのなら評価はできない。それなら負けた方がいい。勝利至上主義ではなく、そこに選手の生き様を見ることが私たちの求めていることだと信じる。

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