百合に似たオレンジの花が固まって咲いていた。ノカンゾウの名は以前調べたことがあったので知っていた。鮮やかな色の割には地味な花だ。
この花には別名がある。忘れ草という。嫌なことをはやく忘れたいときにこの花を身に着けたらしい。
忘れ草 垣も繁みに植えたれど 醜の醜草 なお恋にけり
万葉集のこの歌がノカンゾウのことだとしたら、その時代から園芸の対象になっていたことが分かる。忘れたくても忘れられない恋心への対策には役不足だということになる。
この植物は薬効があることも古くから知られていた。貧血や不眠症などに効果があるらしい。この手の苦しみを忘れることはできるようだ。
私もこの花を植えてみたい気がする。忘れたいのは恋心ではないが。