私の場合、食べる者には無頓着であり、いわゆるグルメではない。小腹が満たせればそれでいいと考えてしまう。おいしいものを食べるのに越したことはないが、そのために金銭を費やすほどの情熱がない。これはある人に言わせれば大変残念なことらしい。おそらく私がパッとしないはこういう考え方にあるのだろう。

そんな私でも時々、健康上食べるべきものと食べるべきではないものというような記事を読むことがある。それらの中でたとえばナッツ類はよく話題にのぼる。コレストロールの抑制、皮膚の再生などに効果のある栄養素があるので食べるべきだという人もいれば、高カロリーなので肥満の原因になるという人もいる。多くの食材は健康に寄与すると同時に病因にもなる。禍福を包含したものであるというのが事実なのだ。
食べるということは異質のものを体内に取り込むことであるから、本来何らかの問題が生じないわけがない。長い生命の進化の中で栄養摂取のために取り込むことに成功してきたものが食物となり、その中にはわずかな毒や害悪をもたらす成分が含まれていることもあるということなのだろう。それが食べるということであり、生きるということなのだ。
そういう極めてスリリングなことを毎日続けているうちに、そのスリルにすっかり麻痺している。食べられればなんでもいいなどと考えだした私は、やはりとても残念な生き物になっているのかもしれない。