NHKラジオ第一放送の日曜名作座を久しぶりに聴いた。正確には新日曜名作座で西田敏行と竹下景子がすべての配役を演じ分けるラジオ劇である。男役と女役をそれぞれの俳優が分担するわけだが、当然、男から男、女から女のセリフ渡しもあって、それを演じ分ける必要がある。ベテランの俳優ゆえ安定の演技を安心して楽しむことができた。
この番組はもともと森繁久彌と加藤道子の二人で行っていたもので、調べてみると1957年から2008年まで放送されていたという。この二人の名演はいまでも印象に強く残っている。学生の頃は芸能人のディスクジョッキーの方をよく聴いていたが、なぜかこのラジオ劇は好きだった。俳優ゆえの独特の人物造形とテンポと間の絶妙さは今でも私が本を朗読する(職業柄)ときの手本となっている。お二人の病没のあと、後継の番組が今でも続いているのは嬉しい限りだ。西田、竹下版となったのが2008年というから、もうこれも長寿番組と言える。
映像のないラジオ劇は演じ手の表現力がそのまま伝わる気がする。そしてそれを感じ取る聞き手側にも想像力が必要になる。時代遅れなのも知れないが、音声のみの世界がかえって雄弁であることを再認識したい。そして、それを感じる力を落とさないようにしたい。最近は聞き逃し配信なる便利なものもあるのは嬉しいことだ。