ピッチクロック

 アメリカのプロ野球、MLBでピッチクロックというルールが加わった。これは投手がボールを受け取ってから走者がいないときは15秒以内に投球しなくてはならないというものだ。時間短縮とテレビ等での視聴者拡大のために導入されたようだが、いまのところ改悪のように思える。

 野球が時間がかかるスポーツだということはかつてから言われてきた。ほかの団体球技と違って試合時間の大枠が決まっていないため終了時間が読めない。だから、放送メディアにとっては厄介で扱いにくかった。サッカーやバスケットボールなどある程度終了時間が読めるスポーツにはそれがない。

 投手がボールを受け取ってから、捕手から送られるサインを確認し、自分の意見と照合して投球する。場合によっては気の短い打者をじらす方法をとるため、捕手が待てのサインを出すこともあるそうだ。これで時間が使われる。野球が好きな人はこの駆け引きも含めて楽しむことができる。相撲でいう立ち合いの駆け引きだ。わずかな間を使って相手の調子を狂わす。

 打者もそうだ。わざとゆっくりと打席に入ることで投手の調子を狂わせる。今回のルールでは8秒という制限が設けられ、プレシーズンマッチで遅延行為のため三振という例がすでに生まれているという。だから打者側からの駆け引きも限られてくる。

 ルール変更があるならば、過去はよかったなどと言っていられない。高校野球のようにテンポのいい試合にも私たちは慣れているので、プロがこの方法をとっても違和感はない。ただ、チームが考え、観客に考えさせる戦略的なスポーツである野球の醍醐味が減少したことには間違いない。もっと頭の回転を速くする必要があると言われればそれまでだが、情報処理優先病はこういうところまで侵食してきているのかと考えてしまう。

 むしろ、チームによる作戦を遂行する際に監督の指示をいちいち伝達することはできなくなるかもしれない。フィールドに立っている選手が即座に判断し、次のプレーを決めなくてはならなくなる。組織の在り方が変わる可能性もある。

 コロナの影響で制限されていた様々なことが変わったスポーツ界であるが、これもその一つなのかもしれない。日本のプロ野球でも早晩これに習うことは明らかであり、これから野球選手になりたい皆さんには指示待ちではなく、自主的な思考が必要になると考えていただきたい。

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