古典作品を読んでいるときぶつかるのが現在との価値観の違いだ。文法や単語の意味が分かってもこれが分からないとしっくり来ない。
たとえば極楽往生を目指す僧侶の話ではなぜ死が幸福に繋がるのかが分からない。そしてただ死ぬだけでは往生できない。様々な手続が必要なことも分かりにくい。
前世の因縁をいちいち持ち出すことも理解を越えるはずだ。何かにつけて運命だという考え方は現代人には不思議である。消極的な生き方のように思えることもあるだろう。
身分制度が当たり前の人間観も納得しにくい。血筋がいいだけで全人格的尊敬を゙受け、身分が低いと下品と分類される。これもかなり理不尽である。
古典を読むときに現代の価値観では理解できないことが多い。一度過去の価値観を知り、それに基づいて世界を見直す必要がある。古典教育の目的の一つはここにあるはずだ。何も暗号読解のように古典を解読することばかりに集中すべきではない。