都合のいい世界

その機械は現実からの目隠し?
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 メタバースという仮想世界に対してアメリカのメタなどの会社が覇権を握ろうと躍起になっているらしい。とてつもないビジネスチャンスがあるらしいのだ。現実では実現できないさまざまな願望を疑似的に満たしてくれるもう一つの世界を演出してくれるというのだ。

 仮想現実というのはゲームの世界だけかと思っていた。しかし、このメタバースの世界はそのなかで商売を行ったり、教育を受けたりすることができるらしい。疑似的な交友関係や結婚も可能になるかもしれないとか。しかもそれは現実社会では得られない自分にとって都合のいい条件で満たされているというのだ。

 もう一つの世界という言い方は多分間違っている。その世界はたぶん一つではない。個々人が思い描く理想をそれらしく見せてくれるものであるから、人それぞれにメタバースがあることになる。他人との接点を持とうとすると、折り合いをつけなくてはならなくなる。すると共有メタバースのようなまた新たな世界が用意されるのかもしれない。

 こうした都合のいい世界を演出するのは技術力を持った巨大企業だ。前述のメタもそうだが、いわゆるGAFAM(社名変更でこういえなくなったが)などのハイテク産業が新たな世界を構築して商業世界を飲み込もうとしている。日本はコンテンツの面で優位にあるが、それもいつまで続くか分からない。ポケモンもドラゴンボールもアメリカの漫画と思っている人が少なからずいる。私たちはメタバースという新世界を楽しむと言いながら、実は企業にとって都合のいい世界を間借りして現実逃避をしているのに過ぎない。

 メタバースに商機があるのは事実だ。チャレンジする価値はある。ただ、現実社会を捨ててまで没入するべきではない。現実を忘れて仮想世界でいくら活躍しても、それは夢物語に過ぎないのだ。このように考えると、メタバースは宗教にも文学にも見えてくる。現実社会を豊かにする材料としてあるのならば存在価値はあるのかもしれない。

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