トンガ王国で起きた海底火山の大規模な噴火は、広範囲な地域に影響を及ぼしている。特に津波は想像以上に深刻なものであり、日本でも被害が出ている。
15日におきたという海底火山の噴火は衛星画像からもはっきりとそれとわかる規模のもので、100年に一度もしくは1000年に一度の規模のものであると報じられている。この噴火の影響で日本でも気圧の変化が観察されたことから、相当な迫力を持つものであったとわかる。日本からトンガまでは約8000㎞離れており、同距離の場所としてはアラブ首長国連邦あたりでありかなり遠い国であるにも関わらず。
今朝の報道によれば17日にも大規模な火山噴火があったとのこと。詳細は未詳ながらも再び津波の発生がないのかは確認しなくてはなるまい。トンガをはじめとする近隣諸国の人びとの生活が心配だ。さらに噴煙や会場に浮遊した噴出物の問題もさることながら、農業地帯であるオーストラリアやニュージーランドへの影響が懸念される。国際的な救援を考えるべきだろう。
さて、標題の日本の津波に関しては15日23時55分に奄美大島で1m20㎝、岩手県久慈港では16日2時26分に1メートル10㎝の潮位上昇を観測したという。かなりの高さである。東日本大震災の津波で再確認したが、津波は通常の大波と違い、波面が全体的に持ち上がるため陸地がそのまま飲み込まれる。だから数センチでも被害が出ることが多い。報道によると北米でも同様の津波が観測されている。現時点での報道では噴火地点に近い場所よりも、遠隔地の方が津波の高さが高くなっていることもある。油断はできない。
遠隔地で起きた地震により、津波が発生し被害が出た記録といえば1960年のチリ地震津波をあげる人は多い。私が生まれる前のことなので内閣府の公開している「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1960 チリ地震津波」を参考にしてみると、「昭和35年5月24日早朝来襲したチリ津波は、北海道から沖縄までの太平洋沿岸各地に被害を与えた。体感する地震がなく、気象庁の対応も遅れ、完全な不意打ちであった。南米沖で発生した遠地津波は、1586年以降19例もあったのだが、その認識が不足していた。」とのことで、地球の裏側で起きた地震がまさか大きな津波被害をもたらすとは考えていなかったというのだ。死者・行方不明者139名、負傷者872名が当時警察の発表の被害者数だが、この報告書によれば、返還前の沖縄の死者3名が含まれていないということである。

東北地方の太平洋側の住民は古来から何度も津波被害にあっており、他地域より備えはあったのにもかかわらず、体感なき地震による津波には対応できなかったことになる。また、インターネットのない時代、広報はマスメディアにたよらざるを得ず、情報不足がもたらした被害であったと今ならば言える。16日の深夜から未明にかけてスマートフォンなどで津波警報が鳴り続けた。数多く寄せられたクレームに対し、神奈川県知事はその方法に問題があったとして謝罪したが、情報があるということの重要さは忘れてはならないだろう。
遠く離れた場所に由来する津波も決して侮ることはできない。このところインドネシアや南太平洋で大きな地震が相次いで発生しており、油断はならない。日本は自国で発生する地震への備えとともに、海を隔てた地域へのアンテナもつねに張り続けていなくてはならないのだ。
“遠隔地由来の津波” への1件のフィードバック