聞き出すこと

 当事者でないと理解できない苦しみがあることは確かだ。それは心身ともに痛みを感じるものである。名状しがたいものであり、本人以外は決して踏み込むことができない何かだ。まずそこから始めなくてはならない。

 その意味において私たちは、他者の窮状を救うことはできないのかもしれない。陥穽から這い上がるのはあくまで本人であり、手を差し伸べれば解決するというものでもあるまい。ただ、本人が上昇するきっかけを与えることはできるのかもしれない。それは相手が苦しんでいるということを理解することから始まるのだろう。

 相手の苦しみを当事者に言語化してもらうことができれば解決策に近づく。漠然とした不安が言葉に集約されれば、その本質に近づく手がかりが生まれてくる。だから、私たちができるのは苦しみの当事者の言葉を聞き出すことだ。これには粘り強い気持ちが必要であり、その前提の愛情もいる。聞き出すことから、自助のきっかけを引き出せるのだ。

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