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寒さ慣れ

 寒い日々が続ているうちに身体が順応してきたのかもしれない。寒冷順化というそうだ。かつては少しでも寒いと震えが止まらなかったのに、それほどでもなくなっている気がする。

 もっともこれは今の気温が続いていることが前提であり、さらに寒くなればやはり過去と同じようになるだろうし、逆に暖かい日が数日挟まると順化の恩恵はなくなってしまいそうだ。体感とは相対的なものであり、気温ではなく気温差が感覚に大きな影響を及ぼす。

 気温だけはなく、感覚的なことの大半は変化によって感じ取るもののようだ。演劇や映画の世界では悲劇の前に必ず穏やかな場面を置く、観客はそこからの落差に感動し、時に涙を流す。緊張と緩和の組み合わせが要だというが、これも人の感覚の特性をとらえたものなのだろう。

組み合わせ

 色彩感覚の不思議を試す例として、同じ色でも周囲の色によって違って見えるということがよく取り上げられる。私たちの感覚は相対的であり、どう見えるのかはその場に揃った条件の組み合わせで決まるらしい。

 皮膚感覚もそうだ。何もしていないときにぶつかられると痛みを強く感じる。しかし、サッカーなどの接触のあるスポーツをしたあとだと同じ衝突がまったく気にならない。寒い日が続いたあとの小春日和はとても暖かいが、気温自体はそう高くない。

 嗅覚も周囲の環境で大きく変わる。その場にい続けると臭いは感じなくなるし、芳香と悪臭の成分は変わらないときもあるだろう。

 私たちの感覚がいかに組み合わせで形成されているかを思うとき、自分の感覚が決して万物の尺度ではないと知る。不安にも繋がるが自信にもなるだろう。