高校時代の思い出の一つにあんバタがある。校門からほど近いパン屋で売っていた。百円以下だったと思う。店で焼いたコッペパンにバターを塗り、その上に小倉餡を挟んだよくある何の変哲もないものだ。バターとなのっていたが、マーガリンだった可能性も高い。
やたらと甘くカロリーが高いもので、食べごたえがあった。高校生の頃は部活帰りにこの店によることにしていた。制服のない高校だったので店を一色に染めることがなかったことだけは幸いだった。これを頬張ることを目標にしてあまり楽しくなかった部活を切り抜けた。高校生にとってはそれで十分だった。
コンビニで似たようなものが売っているが、味がまるで違う。冷静に考えれば今のものの方が遥かに美味い。でも、思い出のバイアスを入れたなら、高校横のパン屋に勝る味はない。あの頃のことはなかなか思い出せなくなっているが、あんバタのことは忘れられないでいる。