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頼りない叔父さん

 大学共通テストの文学的文章の内容は、かなり痛烈な社会批判に読めてしまった。家族から非難され続けている叔父さんを子どもの視点で捉えるという内容だ。

 この叔父さんは定職につかず独学で芸術作品を作り続けている。どうもそれがあまりに独自過ぎるので家族からは無駄なことをしているとしか思えない。語り手の母はこの男の姉なのだが、面と向かって厳しい非難を続けており、男の母、つまり語り手の祖母は幾分同情の念をにじませながらも、男の行動を容認できない。

 幼い語り手にとって叔父さんという大人が全否定される姿を見るのはいたたまれないが、かと言ってその理解者にもなれない。生産性が低く、社会的通念に反するこの男の居場所は、自ら造った小屋の他にはなさそうだ。

 でも、この男はよく考えてみれば、非常にクリエイティブであり自分の人生を自己の才能で切り開こうとしている人物だ。今のところ社会的評価はないが、自己実現ができている。現代の日本にはこうした非組織的な人間の居場所はない。生き甲斐とか生活の感触より、どれだけ収入が得られるか。しかもそれを時間で割って生産性なるマジックワードで括ってしまう。そういう尺度が幅をきかせている今日にこの叔父さんは無用の人と分類されるのである。

 問題文として切り取られた部分だけで読み取るとこんなふうに読めてしまう。叔父さんは怠惰なのではなさそうだ。他の多くの人とはやり方が違うのだ。そういう人に寛容になれない現代社会の息苦しさを私たちは共有している。