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第2球場が消えている

 渋谷に住んでいた頃、近くの神宮外苑にはよくでかけた。中高生の頃は自転車で周回道路を走ったり、芝生の広場で野球をしている人たちを眺めたりしていた。当時は全く人気がなかったスワローズの神宮球場の試合を新聞社の景品でもらったチケットで観に行くようになって少し付き合いが深まった。学生になって野球部の試合も観戦するようになった。当時から気になっていたのが第2球場の存在だった。

 神宮球場に隣接する第2球場はおそらく練習用に作られたのだろうが、私がこの地に通っていた頃にはすでにゴルフ練習場となっており、不思議な存在だった。時々突然大学野球が行われたりしていた。ただ、その時点で野球以外の使われた方が優先されていたようで、神宮球場で大学野球とプロ野球が同日開催のとき、スワローズの選手は近接する芝生のグラウンドで肩慣らしをしていた。当時の主力打者の広沢選手は球場から明治大学の得点を意味する応援歌が流れるたびに喜んでいたのを思い出す。

 第2球場に入ったことはおそらく2度ある。一つは高校野球の大会で、もう一つは東都大学野球の試合だったと思う。どちらも観客は少なく閑散としていたが試合はかなりレベルの高いものだったと記憶している。ゴルファーが立つ場所が設置された特殊なスタンドが印象的だった。

 この第2球場が現在解体されている。再開発によりラグビー場が建設されるらしい。今の秩父宮ラグビー場は解体されることになっている。神宮外苑の再開発に関してはさまざまな意見があり、特に植栽の変更がもたらす環境問題が注目されている。都心のなかにある緑地であり、戦時には学徒出陣の聖地となったこともあるらしい。自然の保全と、歴史的な記憶の保護は重要な問題だ。第2球場という存在の意味が分かりにくかった施設も実は意味あるものだったはずだ。結局この地を離れることになったため、縁が失くなってしまったが、取り壊されたと聞くと残念でならない。

カナダチームのフェアプレイ

 台風のために試合が中止になってしまったラグビーワールドカップの釜石大会で、対戦する予定であったカナダのチームが、台風通過後の清掃活動にボランティア参加したことが報じられています。こうした善意は人々の感動を誘うとともに、自らもいつかはそのように行動すべきであるという規範にもなります。

 釜石での試合は復興へのシンボルという意味合いもあり、できれば最後の試合もやってほしかった。図らずも今回も天災による試合中止ということになってしまいました。その残念な気持ちを解消する素晴らしいエピソードがこのカナダチームの善行であったことになります。国際大会で国代表のチームが試合以外の活動に参加するということは他のスポーツではほとんど見られません。ラグビーという競技の与える精神性、哲学が具現化したものと考えられます。復興スタジアムの名のとおり、協力と善意が復興の姿であることを知らしめてくれました。

 カナダチームのような行動が私たちにできるのだろうか。それをこの逸話は私たちに問いかけます。日本人は礼儀正しいなどと自画自賛する前に行動として実行できることは何かを考えなくてはならないと感じました。