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ある枠組みの中で

 様々な人間の生き方を共通するある枠組みの中でとらえるという手法は文学などの創作の世界では常套的だ。たとえば同じホテルに宿泊した人たちの人間模様を描くグランド・ホテル形式はいろいろな作品にみられる。この変形としては建物や乗り物ではなく、特定の地点の話としたり、特定の祝祭や行事を枠とするものがある。

 この方式で描く群像劇はそれぞれの人の違いの書き分けが肝要だ。同じ場所にいても個人の属性やおかれた立場が異なれば行わることは大きく変わっていく。年齢、性別、職業、直前に起きた出来事、人間関係など、それらのどれか、または複数が変われば大きく結果が変わっていくことになる。

 私たちはこういった作品を見たときに、いかに人生は多様なものであるのかを知り、そこに感動のポイントを見出す。個々人に別の今日があることは当たり前なのだが、日常生活の中ではそれを意識できない。むしろ自分と同じような毎日を過ごしている人が大半なのではないかとなんとなく考えている。そう考えることで安心もする。自分が自分だけの生き方をしているという自覚は時に大変な緊張をもたらすものだ。

 枠組みを決めて世界をみることで見えなくなるものがたくさん増える。その一方、見えてくるものも生じる。気づかなかった要素が浮き上がってくるのだ。