先日、「旅と日々」という映画を観てきた。つげ義春の漫画を原作とする作品だが、原作の再現というより、その世界観を利用して独自の映像世界を作り出していた。
主役のシム・ウンギョンは韓国人ながら日本の映画の脚本家として登場するが、外国人ゆえの客観性が自然に演じられており、全体的に虚構性が強いこの作品にリアルな雰囲気をうまく表出していた。
ストーリーは前半の離島を思わせる海のシーンと、後半の雪深い辺境の宿のシーンとに分かれる。どちらもゆっくりとした時間が流れ、しかしその中にはさまざまな人間模様がある。旅の途中で出会うかもしれない一時がうまく描かれていた。
いつもとは違う時間の流れに身を置くこと。それが旅の意味だと考える。最近は観光地に行っても効率よく観光スポットを巡ることばかりに関心が行き、結局非日常の時空に身を置くことができていない。効率性とか費用対効果とか、そういうものから解放されるために旅はあるのではないか。
どこそこに行きましたが、有名な場所には何処にも行けませんでした。ただ、ゆっくりとのんびりと過ごすことができました。そして普段の生活を振り返ることができました。そういう経験が本当の旅なのだろう。
最近はそういう旅の仕方をしていない。観光スポットをどれだけ踏破するのか、そこをどれだけ短時間で、安価に巡って来たのかということばかりに気を取られすぎだ。
もっと余裕のある旅をしてみたい。そう思いながら毎日を過ごしている。