子どもの頃は納豆が好きではなかった。嫌いではなかったがどうして面倒な糸を引く食物を食べなくはならないのかと考えていた。いまは不可欠な食材である。
日本食の中でも先鋭的な食材とされる納豆だが、日本人でも納豆嫌いは多い。だから、外国人に納豆が食べられなければ日本人の味覚は分からないなどというのは間違いである。おおまかに行って、かつては東日本の人は納豆を日常的に食するが、西日本はそうでもないと言われていた。私がかなり前に北陸に住んでいた頃、そんな話があったが、近隣のスーパーで普通に納豆は売られていた。
納豆には身体によい栄養素が多数含まれているようだが、中でも血液をサラサラにするビタミンKは注目すべきものである。動脈硬化などの対処に納豆は必要な食材らしい。私は親戚も含めてこの種の病気に弱い家系なので、納豆は摂らなくてはならないものの一つだ。
とは言え、納豆を定期的に食べるのは簡単ではない。余裕のあるときはパックの納豆を食べるが、そうではないときはコンビニの納豆巻きのようなもので済ませている。巧妙なパッケージは食べられるようにするまで開封するのに工夫がいるが、納豆巻きのために手順を完璧にマスターした。
子どもの頃には苦手であったのに、いまは毎日のように食べているものは他にもある。食文化は後天的なものであり、それを意識するのにも時間がかかる。文化とはそういう側面があるから、表面的な現象で異文化を批判することはできない。自国文化でさえ理解するには相応の時間が必要なのだから。