盆の送り火の日である。京都の五山の送り火は有名だが、先祖を死者の国に送り返すための行事は全国にある。新暦月遅れの場合は今日だが、旧暦の場合7月16日は新暦の9月8日にあたり、まだ先だ。先祖を送る行事はとても大切だったらしく、いろいろな形がある。
日本の祖霊は歓待すべき対象と考えられる一方で祭りの終わりとともに帰還してもらわなくてはならない存在でもあった。祖霊がいる間は日常の生活はできないのだから、帰っていただかなくては困るのである。そこで盛大な見送り行事が行わる。送り火の巨大化もそうだが、あるいは祭りの際に使った祭器等を片付けることや、場合によっては破壊することを強調した儀礼もあるという。盂蘭盆会のみならず、神や祖先神を招来したときはその終わりにはっきりとした終了のための行動をする事例を見たことがある。
ハレの日が終わり、再びケの日に戻るためにはそれなりのけじめが必要なのだろう。これは今日の私の生活にも言えるのかもしれない。生活の局面を変える時には何か大きなことを、目に見える形でしておかなくてはならないのだろう。毎日がお祭りのようになっているのが現代人の生活だが、一度冷静に戻るために浮ついた精神はどこかにお帰りいただく必要がある。