初めて料理をしてそれを作って食べたときのことを覚えているだろうか。それがレトルト食品の解凍でもいい。何らかの調理を施し、食べられるものができたという感覚を記憶しているだろうか。
恐らく父と作ったお好み焼きや雑炊の類が私の最初の料理なのだろう。自力だけで料理をしたのは父親が単身赴任し、その任地に母が手伝いに行ったときだった。結果的に子どもは残され、自炊を余儀なくされたのだ。
外食の選択肢は当時は考えなかった。子どもだけで行けるのはハンバーガーショップくらいだと考えていたし、そもそも経済的事情もあって自分で作った方が安いと考えていたのである。
当時は親子丼と魚の焼き物を交互に食していた。その他のものも時折混ぜていたが、自分のレパートリーが増えるまでは単調な繰り返しだった。ただ親子丼の味付けは日々磨かれたし、レトルト以外の料理もできるようになっていった。
初めての料理は学校の家庭科の時間であったはずだが、自宅での調理といえば目玉焼きにキャベツの千切りで、それにソーセージをボイルして添えるくらいのものだったはずだ。それでも満足できたし、満腹になった。いまは贅沢になってしまったと思うのである。