亡き父の趣味は釣りだった。小学生の頃は無理やり連れて行かれた。恐らく母親の保育時間を軽減するための手段であったのだろう。そんなことは今になって分かったことで、当時としては日曜日は川か海ということが当たり前になっていた。
父の釣りは粘り強いというタイプで決して巧妙とは言えなかった。釣り場を決めたらその場で粘り強く待つタイプであった。恐らく子連れであったために頻繁に場所を変えることができなかったのだろう。
海の場合は防波堤の上で陽にさらされることになる。子供用に穴釣り風の仕掛けをわたしに作り、自分は目的の釣りをしていた。私はフグが釣れるたびに外れだと言われ、ベラのときはいいねと褒められ、カサゴのときはとても褒められた。でも、何がいいのか全く分からず、すぐに飽きてしまった。
川の時はそれよりはマシだった。釣れるのはハヤと呼ばれたウグイの類で、ヤマベという魚がよく連れた。鮎も狙っていたはずだが、それは滅多に掛からない。私は川釣りはすぐに飽きて、近くの田んぼにゲンゴロウやタガメを見に行くことに熱中した。
子供にとってはそれで十分楽しめた。父の付き合いは退屈であったが、自然と向き合いゲームなどなくても満足できる時間の使い方を学ぶきっかけをもらったのかもしれない。