何かを修得するということは、それら関連する知識や技能ができるようになるというだけではなく、学び方そのものを学ぶということだ。テスト前の丸暗記で試験を切り抜けても、終わってしまうとすっかり忘てしまうという経験は誰しもあるだろう。学ぶことは真似ぶことという人もいるが、それは師の考え方、生き方の模倣をすることで、表層の形をコピーすることではなさそうだ。
若い頃は短期記憶の能力が優れているので、とにかく暗記ということができる人が多い。ただ、この方法だと記憶の限界とともに雲散霧消する。そうさせないためには知識を習得する意味を考え、関連する要素との関係性を把握することだろう。詳細は忘れても仕組みが分かっていれば再現することができる可能性がある。
料理に例えれば、ある料理のレシピを覚えるのではなく、調理の仕方や調味料どうしの相性などを覚えることになる。それが分かれば他の料理も作れる。絵画なら筆の持ち方、デッサンの仕方などの基本を学べばいろいろな絵が描けるようになるはずだ。また画家の生き方を知れば多少の画法の差より大切な何かを知れる可能性がある。
大事なのは表面的な模倣に終わらせないように指導することかも知れない。型から学べとはよくいう話だが、型の中にはそれを形成する心のあり方が含まれていることを忘れてはならない。