大学共通テスト国語の3問目はいわゆる新傾向問題であった。数年前の試行問題のときは随分批判されたが、今年はそれに比べると穏当であった。ただ、時間を10分延ばしても全体的に時間が不足しており、相変わらず熟考より、処理能力が求められている。
新傾向問題はいわゆる国語表現の分野に関わる。ある人が外来語の使用状況を調査することにより、自分なりの意見を述べることにしたという想定で、図表の読み方や、文章構成についての考えを求めるものだった。問題そのものは受験勉強の専門家におまかせしよう。
この中で中心的に扱われているインフォームドコンセントは、当初確かに分かりにくくなぜそのまま使われるのか分からなかった。医師による病状の説明、患者もしくはその関係者の理解、今後の処置についての合意という複数の行動が一つになった概念であるためにうまい訳語が見つからなかったのだろう。問題文中に示された納得診療というのも、正確には概念のすべてを表してはいない。
日本語は外来語を取り入れやすい構造になっている。漢字やカタカナを使ってそのまま表音表記し、助詞の働きで文中になじませることが可能だからだ。動詞や形容詞などに変形することもできる。だぶる、さぼるなどにはすでに外来語の趣きはない。ググる、トラブるには語源の根っこが見えるが、それに慣れるのも時間の問題だ。さらに万能のサ変動詞をつければ何でも動詞化できる。ショッピングする、リードする、ネットするなど何でも可能だ。
日本語環境は外来語の導入に寛容であり、その和臭化も迅速におこなわれる。ただ導入期には混乱も多く、しかも導入する言語が飛躍的に増えている。すると通じない外来語ができる可能性が増える。ビジネス界ではアジャイル、コンプライアンス、スキームは常識かもしれないが、彼らがアンフォルメルやインスタレーションの意味を理解しているかは分からない。勝手に輸入された言葉が仲間内以外では通じなくなっている可能性がある。
外来語の扱いは何でも受容する日本の重要な問題であり、これからも考えていかなくてはならない課題なのだ。