2024年問題

 働き方改革関連法で適応が猶予されていた建設事業と自動車運転業務および医師に対して2024年4月1日からは例外が認められなくなる。結果として労働時間が月45時間、年360時間以内であることが原則となる。労使の合意があった場合は年960時間まで延長できるが、その場合は賃金の50%の割増が義務づけられる。

 本来は労働者を守るための法律であるが、実際には彼らの収入を奪う原因にもなり得る。規定の時間外で得ていた収入を当てにできなくなるので、すでに離職者が出始めている。雇用者側は割高賃金を避けるために雇用者数を増やしたいが、人材は足りない。賃金を上げれば運送にかかるコストは上がり、操業自体が難しくなる。運送業に関しては軽トラ個人営業者がインボイスに嫌気がさして廃業するケースが昨年度来見られる。業界全体で人手不足に直面するのが2024年問題だ。

 運送業に関しては様々な規制や安全面、さらには習慣上の問題から外国人労働者を雇用しにくい。日本で2種免許を取得するのは高度な日本語能力がいる。さらには左側通行以外の国から来た外国人は事故を起こしやすいだろうし、顧客第一の日本の商習慣も馴染むのには時間がかかる。そして、何よりも決定的なのは安すぎる賃金である。厚生労働省の2022年の調査によれば、タクシー運転手の平均年収は361万円、労働者の平均年齢は58.3歳である。これが日本の安価な運輸流通を支えてきた。外国人労働者がわざわざ条件の悪い職を選ぶはずがない。

 2024年問題の解決のためには何よりも運輸業界の待遇改善が欠かせないだろう。これは一つの業界に留まらない。流通業に依存する現在の多くの産業全てに関わる。とりあえず、送料無料のサービスは今後大幅に縮小する可能性が高い。また、再配達無料も維持することが難しいかもしれない。業界ではAIなどを活用したIT化などでこの問題を解決しようとしているが、なにか一つの策だけでは解決できない。私は某宅配業者のアプリを利用して、配達予定の通知を受けている。これによって不在時の配達をあらかじめキャンセルすることができる。再配達を避ける方法の一つだ。業界外の人間にも他にもできることがあるはずだ。

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