いつの間にか変わってしまった風景がある。その一つにスズメがいなくなったことがある。私の住む東京の郊外には比較的街路樹や公園などがあり、都心部に比べれば野生動物も住みやすいと思う。にもかかわらず、かつてはどこにでもいたスズメに出会うことが少なくなってしまった。
公園などに訪れる野鳥は圧倒的にハトとカラスが多く、メジロ、ウグイス、シジュウカラなどを季節によっては見つけることができる。ハクセキレイは少ないが印象的であり、ヒヨドリやムクドリは群れて飛来すると圧倒的である。ところがかつては最も多かったスズメがほとんどいない。
鳥に詳しい方の書籍やサイトによると、都市部のスズメの減少は大変顕著な現象のようだ。その原因として営巣場所が現在の建築物では確保しにくいこと、耕作地の減少で昆虫などの餌の確保が難しいこと、騒音や排気ガスなどの与えるストレスが繁殖力に影響を及ぼしていることなどが挙げられている。おそらく、そのいくつかの原因が相関しているのだろう。
スズメは源氏物語に幼い紫の上が飼育しようとしていたエピソードが書かれているし、枕草子にも登場する。スズメを図案化した文様はいろいろある。文化に溶け込んできた動物である。子どものころ籠を伏せてスズメ獲りに挑戦した人は多いだろう。雛を拾って育てたこともある。そういう身近な動物が少しずついなくなっている。
