国際経済協力機構の実施する国際学習到達度調査で、日本の生徒の読解力が向上したとのニュースがあつた。これだけ読むと祝福すべきだろうが、現場の教員からすると大いなる疑問をもつ。ここでいう読解力とは何を意味するのだろう。
短い時間の中で与えられた設問に解答する力を読解力というのなら、ある程度の教育の成果はあるのかもしれない。特にデジタルデバイスを活用して検索した内容を自分なりに纏める力は少し前の世代と比べて格段に向上している。
でも、情報処理以上の読解となると覚束ない。検索可能なものを越え、思考と経験を積み合わせる行いは苦手のようだ。いまの世代には直接的な体験が欠けている。情報としては接していても実物を見たことがないのである。例えば昆虫なり、岩石なり手にしたことがあれば、そこから得られる刺激がある。それがないから、モンシロチョウの羽化も木星の衛星の運行も同じレベルで遠い存在なのだ。
だから子どもの読解力が向上したと言われると疑問符しか思い浮かばない。むしろ、低下しているというのが私の実感である。
小手先の読解力を上げるより、思考とは何かを考えたほうがいい。イノベーションはそういう体験の積み重ねなしには生まれない気がする。
