名付けの効果

 ものに名をつけることは対象の分節化であるが、今回はその話ではない。つけられた名前が対象の捉え方に大きな影響を与えることを再認識したという話である。

 例えば植物名などが分かりやすい。特定の形状と生態をもつ花に、名前をつける行動は命名者の恣意的な選択によるものだ。しかし、それが認められ、権威を有するものとなるとその名を基準に対象が見られることになる。そしてそれが定着するともうその印象は揺るぎないものとなる。

 ある本で読んだが、日本各地にもっとも多く分布するウグイスは、小笠原諸島だけに生息するハシナガウグイスの亜種なのだそうだ。分類上は離島に棲む少数派の方が上位にあり、我々が普通春告鳥としてもてはやす雅語ともいえる鳥の方は下位に位置する。学名ではそれがはっきりとわかるのだが、通称では逆に思える。名付けというのはこんなふうに対象の見方を変えてしまう。

 だから対象を見つめるときには名前を頼りにしすぎてはならない。まずはそのものに向き合わなくてはならないということだ。当たり前のことなのにこのことを私はしばしば忘れる。

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