統一地方選挙の対象地域ではないが、隣県が知事、県議、市議のすべての選挙が行われるらしく巨大な掲示板が立っている。また、すでに選挙戦が始まっており、様々な候補者が演説している。その中で気になったことがある。
ある候補はふるさと納税の弊害を訴えていた。その内容によると、本来市に入るはずの税金が他の地域に流失している。その額が非常に大きく、損害というほかないというのだ。これは多くの人が考えていることであり、大都市圏の自治体にとっては深刻な問題なのであろう。
ふるさと納税を実施する人の多くはいわゆる返礼品が目当てである。魅力的な返礼品を用意する自治体には税が集まりやすい。人口の少ない地方都市町村にとっては重要な収入源であるから、この制度には意味があるのだ。
ただ、ふるさと納税の目的はあくまで納税者がその地域の支援をしたいという意志に基づくものであり、その結果自分の住んでいる地域の福祉への支援が少々低下するという意識が必要だ。こういう考えを持っている人は少なく、私もいま理屈では理解しても、実感に基づくものではない。都会人であればあるほど、自分の居住地域に対する愛着は低く、仮の住まいという考えが強い。だから、税をどこに収めようとかまわないと考える。
最後まで演説を聞かなかったので、どのような結論なのかは分からない。ただ、言えるのは納税者の態度を責めたところで得票には至らないということだろう。その地域の住民ではないのでそれ以上は言えないが、要するに自分の住まいに愛着が足りないということを言いたいのだろう。
彼は政治家としてどのような政治を展開すべきだろう。まずは自分の住まいに愛着をもたせるような政治を行うことを目指すべきだろう。そのために何をすべきなのかを考えるべきだ。ふるさと納税という視点で考えれば、地方自治体の政治家の仕事の一つは住民の地域社会への関心を高めることだ。税収増につながるのならば、それは立派な仕事といえるだろう。あなたのふるさとはどこなのかとなじる前に、ふるさとを一緒に作りましょうと訴え、それを粛々と実行する人が地方自治体の政治家にはふさわしい。