昔話は話し手が時間や空間の保証をしないという点において独特の世界を語る。それゆえに発揮される力というものがある。
昔、ある所に、爺がいた。昔話の始まりはこのような感じであり、時代、場所、人物に関する詳細情報は省かれる。それを追究しないことが昔話の読者もしくは聞き手の条件になっている。この曖昧さは汎用性として機能する。
昔話で語られる内容の中には非現実的なものもある。誇張もあるし、虚妄としかいえないことも含まれる。ただ、その中には一面の真実と言えるものも含まれており、教訓として味わうこともできる。それが昔話の力なのであろう。
閉塞的な時代は昔話のエネルギーを利用してもいいかもしれない。そこから得られるものは最新の情報より有益なこともあるかもしれないから。