北陸の小さな町に住んでいたとき楽しみの一つに漁港の周りを歩くことがあった。多くの漁船が並ぶ中で、カモメがいくつも並んでいたのを思い出す。波けしブロックにあたる波は夏は穏やかで、冬は激しかった。海辺にある魚屋は高級な魚種の販売を中心として、結構いい値段のものが並んでいたが、そのわきに切れ端のようなもんが詰め込まれていた。私はそれを買って帰って味噌汁の具にしたものだ。これが結構うまいもので、小骨に気をつけさえすればいい料理になる。パックは当時、かなり入っても100円だった。懐かしい。
浜辺の方では時々地引網を引いていた。引き上げるとたくさんの魚が入っている。それを子供たちが興味深く見に来る。漁師たちは不愛想に金になりそうな魚をえり分け、そのほかのいわゆる雑魚は見に来た子供たちに分け与えていた。雑魚といっても十分な大きさと味もなかなかと聞いた。
私は比較的時間に縛られない仕事をしていたので、昼間から漁港に出かけていた。漁師たちはそれを不思議に考えていたはずだ。残念ながら一度も話しかけたことはなかったし、話しかけられたこともない。今から思えばちょっと残念である。