
マーラーの交響曲を聴きにいって驚いたことがある。クラリネット吹きがときどき楽器をほぼ水平にまで上げて吹くのだ。リード楽器の吹き方としてはずいぶん不自然だ。トランペットなら当たり前だが、クラリネットがそんな恰好をするとびっくりしてしまう。
調べてみるとベルアップという奏法らしい。そしてマーラーはこの吹き方を譜面で指定しているのだという。繊細な音を出すクラリネットがまるでラッパのように吹かれる。オケの演奏でこれを見るとかなり印象的な光景だ。演奏家もかなり無理をしていることが伝わってくる。
音を遠くに飛ばすためというのはあまり説得力がないようだ。楽器の先をどこに向けようと音の伝わりは変わらない。違うのはやはり見た目の印象だ。聴衆に視覚的なインパクトを与えるというのが第一の効果なのだろう。その意味で私のようなものが現れたことはすでに成功しているともいえるのかもしれない。
