恩師

 大学時代の恩師が突然訪ねていらっしゃることになった。そこで酒食を用意して歓待しようとする。こんなに夜遅くどういうことなのだろう。

 なかなかいらっしゃらないことを心配しているうちに、布団がないことに気づいた。どうすればいいのだろう。出かけている母に電話で聞いてみることにした。しばらく帰れないから、番号案内に電話して貸布団屋を探せばよいとの答えを得た。そうかその手があったのか。分かったと理解した。それにしてもなぜ帰って来ないのかと尋ねようとしてはたと思考が止まった。

 先生はもう何年も前に逝去されていた。実家の母はすでに外出などできる状態ではない。なにかおかしい。

 これが夢であることに気づいて時計をみると丑三つ時だ。実に古典的夢オチである。なぜこんな夢を見たのだろうか。ここ数日の疲労感と体調異変やもしかしたら気圧の急降下が影響したのかもしれない。

 そういう科学的解釈とともに、何らかの不安が映像化したものとも考えられる。恩師に世話になっていた頃はもっとも輝いていた時代だという思いがある。懐古を通り越した回帰願望が出てしまった可能性がある。

 正気に戻って考えることは、有為転変の中で過去にとらわれることは免れることはできないという通念の確認だ。ただ、過去には戻れない。戻れたとしてもそこにすばらしい何かがある訳ではない。今を生きるしかないし、それこそが生きるということなのだ。

 夢の中とはいえ、恩師と少しお話できたのはよかった。そして今もなお教え導いてくださっていることに感謝申し上げたい。

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