かつて住んでいた町の住まいだったあたりの場所を歩いてみた。桜並木は苔生して老木の趣きがある。何も知らなければ由緒ある並木なのかと思うばかりだ。
でも、確かここに住んでいた頃は頼りない若木にようやく花をつけるといったものだった。それがこの堂々たる幹と根回りを見せるようになったのは、それだけ歳月が過ぎたということだ。幾多の嵐と、大地震、それよりも深刻な大気汚染、異常気象に晒されて逞しさを身に着けたのだろう。
桜並木のこの姿を見ている私もまた年老いたことになる。風格も威厳もなく、周囲からも尊ばれることもないがそれでも己の見たことを覚えていられるだけましということだろう。そう考えることにする。
