消えたマニュアル

 おそらくアルバイトのマニュアルにでも書いてあったのでしょう。コンビニエンスストアの会計時にお釣りがあると差し出した手を店員が下から支えるように持ち、小銭を渡してくれました。近ごろは接触厳禁とのことでこういう経験はできなくなっています。

 客の手を取り確実に釣り銭を渡すという方法はバイトを始めたばかりと思われる店員に多く、おそらく接客マニュアルか何かに書いてあったのではないかと推察します。若い女性店員にいきなり「握手」されたときには少なからず動揺しました。もちろん不快感を持たなかったのは言うまでもありません。誤解なきように申し添えると男の店員でも同じです。買い物をすることが人間同士のコミュニケーションであったことを思い出させてくれたからです。

 この麗しき接客術はいくつかの要因で消えてしまいました。一つは店員の釣りの手渡し技術はすぐに習得できるので、握手をしてくれる期間は短いということです。そしてそれよりも決定的なのがコロナウイルスの感染予防としての釣り銭のトレイによる返却というマニュアルが前例を消滅させたことです。

 他にもキャッシュレス決済が促進され釣り銭自体がなくなったことも関係します。また店員そのものが不在のレジまで誕生しています。こうしてレジのぬくもりは絶滅していくのでしょう。

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