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交渉で勝ち抜く

 トランプ大統領の就任演説は危惧していた通りの破天荒なものだった。パリ協定や世界保健機構からの脱退すると宣言したことなどから察する事ができる。

 アメリカはこれまで世界の警察を名乗るほど、世界の様々な問題にコミットしてきた。優位を示し続けることで最大の資本国の地位を見せつけてきた。今度の大統領はそれを止めるのだという。自国第一主義といえば聞こえはよいが、要するに他人に構っていられる余裕がないのだ。新興の中国に手厳しいのはイデオロギーの問題だけではなく商売敵だからなのだ。

 世界保健機構にしてもパリ協定にしても、アメリカが多額の拠出金を支払い、自国の天然資源で商売することを妨げることになるからに過ぎない。かつてなら余裕があった超大国がそれほど強くはなくなったのである。

 トランプ大統領は基本的には商人であり、利益になることをやり、損になることを切り捨てる。自分の得になることは追求するが、損になることは前例にこだわらず切り捨てるのである。大言壮語するのはかつて公約していた国境の壁ができなかったことからも明らかである。

 この4年は少なくともそういう振る舞いに耐えなくてはならない。隣国のカナダやメキシコにも圧力をかけ、まず脅し、それから条件のよい交渉をしようとする。日本の商環境とは異なるので当面は困惑するだろう。明治の一部の政治家たち、戦後の白洲次郎のような気概のある指導者が求められる。ただし、戦いはあくまで避け、交渉ができることが不可欠だ。

 交渉で勝ち抜くという能力はどこで磨かれるのだろう。それが教育の現場でできるならばどのようなものなのだろうか。現在どのような実践がなされているのか関心がある。

よりはマシ

 アメリカ大統領選挙の結果に失望した日本人はかなり多い。国民を扇動し、裁判では敗訴しているのに、そして選挙運動中の発言は理解不能だったのにも関わらず、選挙で圧勝してしまったからだ。アメリカ人の民度に失望した人も多かっただろう。

 ただ、いろいろな情報を総合すると、ハリス民主党よりはマシだと考えた人々が多かったということになる。その一つが民主党が国民の生活感を捉えられなかったことにありそうだ。急激な物価上昇という現実があるのに、選挙戦では人工中絶や性的マイノリティの保護の話ばかりを争点とする。間違いではないが優先順位がおかしい政策論争に国民が非を訴えたということなのだろう。

 二択しかないアメリカの政治にとっては積極的賛成か、比較的賛成のどちらかしかない。そもそもトランプ氏のような個の立つ人物が党の代表になっていること自体が実は問題で、よりふさわしい共和党代表がいないことに問題点がある。

 これは民主党にも言える。ハリス氏が副大統領としてもう少し実績を残していたら結果は違っていたはずだ。バイデン氏がもっと早く政権移譲を考えられる存在になっていたらと多くの人が考えている。ガラスの天井の問題とは異なる気がする。

 民主政治の性格として常に誤りを繰り返すということがある。絶対的権威がないことは選択ができるということだが、常に最善の選択肢が用意されている訳ではない。その中で比較的上級なものを探し、折に触れて意見を権力側に伝えて行くしかないのだ。それが機能するのか。注目したい。

 

小さな怪物の正体

 隣町にある図書館に通うことをほぼ日課としている。今日は朝からハロウィンの仮装をした子どもたちの姿をたくさん目にした。どうやら地域が主催したイベントがあったようだ。本当のハロウィンに近い10月最後の日曜日が選ばれたのだろう。カボチャ色のドレス、骸骨がプリントされたジャージ、ディズニーのプリンセス、ゲームのキャラクターなど様々だった。ほとんどが小学生低学年以下の子どもであった。

 ハロウィンの趣旨をどれほど理解できているのか、親の望みにただ従っているだけなのではないか、などと思いもするが、いい大人が乱痴気騒ぎをするのと違って可愛らしくも微笑ましくもある。これは子どもの行事であると改めて考えさせられた。

 子どもが家々を回り、門付けの芸能人を行い、代わりに報酬を受けるというスタイルは、我が国古来の民俗にもある。神の代理として家々を祝福して回る者で、広く言えば芸能人の元祖のようなものだ。今の芸能人は電波やデジタル信号に乗って芸を見せるが、かつては本当に各家を巡回していたのだ。その子ども版もあったのである。

 ハロウィンがそれと同じとは言えないが、キリスト教の普及以前からあった民間信仰が背景にあることは想像できる。その類似性がこの行事の受容を容易にしているのだろう。得意の和風化によって、大人のハメ外しにしたのは良くなかった。韓国の悲劇も間接的に影響を与えてしまったのかもしれない。

 恐らく根幹にあるのは収穫感謝と先祖崇拝であろうと考えている。アメリカのジャコランタンは先祖を迎えるための道具のように思えてならない。先祖の役を子どもが行うことに意味があったのではないか。

 ちっともキリスト教的ではない風俗が、むしろそうであるからこそすんなりと受け入れられたと推測する。仮装することばかりが注目されるが、その意味について考えるのは無意味ではない。

アメリカの大統領選挙が気になる

 口さがない言い方をすれば次のアメリカの大統領選挙には危険性を禁じえない。バイデン大統領は高齢であり、いい間違えや記憶違いが目立っているという。80代であれば無理もない。人間的には良いのだが、高齢であることだけはいかんともし難い。緊急事態のときに果たして適切な判断ができるのか心配になる。

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 対して共和党はトランプ氏が代表になることが確実視されており、彼のアメリカ至上主義はアメリカ国内のみならず世界の分断化を加速してしまう。できれば再登板は避けてほしい。

 この両人以外の人材はなぜ出てこないのだろう。アメリカほどの国が世代交代できない理由が分からない。政治の世界には独特の雰囲気があるのだろうか。

 我が国にも失言と知識不足を何度も繰り返しながら引退しない政治家がいる。総理になるためには無視できない権力を持っているらしい。政治家に定年は要らないが、しかるべき年齡に達したら勇退することを考えた方がいい。老人と狂人の争いと揶揄される大統領選挙をアメリカ国民はどのように考えているのだろう。